◇不動産相続コラム◇名義の向こう側─相続のリアル ◇
不動産業に携わっていると、土地や建物の「名義」にまつわるドラマに出会うことがあります。
今回は、私自身が経験した祖父の相続を通じて見えてきた、名義と家族、そして制度の物語をご紹介します。
祖父が亡くなり、相続手続きを進める中で、所有している土地の名義を確認していたところ、思わぬ事実が判明しました。
いくつかの土地が、なんと曾祖父の名義のまま残っていたのです。
📜昔の常識、今の課題
かつては、相続登記をすぐに行うという意識が薄く、「名義変更は後回し」というケースが多く見られました。
その結果、名義が何代も前のまま放置されている土地が、今でも全国に数多く存在しています。
私の祖父の土地も例外ではなく、田舎ということもあり、所有している土地はかなりの広さがありました。
現況は山林。しかし登記簿上の地目は「田」や「畑」となっており、農地法の規制がかかるため、農業委員会への相談も必要になりました。
このようなケースでは、単なる名義変更だけでなく、地目変更や農地転用の可能性も視野に入れながら、慎重に手続きを進める必要があります。
🧩相続登記は“人間関係の整理”でもある
相続人が多ければ多いほど、必要書類も増え、調整も複雑になります。
印鑑証明、戸籍、遺産分割協議書など、法的な手続きはもちろんですが、それ以上に大切なのは「人との関係性」です。
「うちは関係ないと思ってた」「そんな土地があるなんて知らなかった」──そんな声を聞くこともあります。
今回のケースでは、常に迅速に動いてくれる叔母の存在が大きな助けになりました。関係者への連絡や説明を率先して行ってくれたことで、スムーズに理解と快諾を得ることができ、相続登記の第一関門を難なくクリアすることができたのです。
🏠不動産屋として伝えたいこと
この経験を通じて、不動産屋として改めて感じたのは、「名義の整理は、未来への準備」だということです。
放置された名義は、次世代にとって大きな負担になります。
今のうちに登記を見直し、必要な手続きを済ませておくことが、家族への思いやりでもあり、資産の価値を守ることにもつながります。
令和6年4月から相続登記が義務化され、名義の放置は法的なリスクにもなり得る時代になりました。
特に宅地など、今後の活用や売却を視野に入れた不動産は、名義の整理がスムーズな資産運用の第一歩です。
もしご自身の土地に不安がある方は、ぜひ一度、登記簿を確認してみてください。
名義や権利関係を整理することで、思わぬ可能性が開けることもあります。
不動産は「持っているだけ」ではなく、「活かす」ことで真価を発揮します。